ホテル・宿泊業で外国人を雇用する際に必要な就労ビザとは?

近年、訪日外国人旅行者の増加に伴い、ホテル・宿泊業界でも外国人スタッフを積極的に採用したいというニーズが高まっています。多言語対応や異文化理解が求められる場面が増えたことで、外国人スタッフの採用はサービス向上や業務効率化において欠かせない要素となっています。

一方で、「多言語対応ができるスタッフを採用したい」「外国人の応募があったけれど、どのビザが必要か分からない」といった悩みを抱える企業も少なくありません。特に調理や清掃などの業務では、「就労できると思っていたのに、実はビザの対象外だった」というケースも少なくないのが現状です。ホテル・宿泊業で外国人を採用する場合、担当する業務内容によって取得すべき在留資格(就労ビザ)が異なるため、制度を十分に理解していないと不許可や採用トラブルにつながる恐れがあります。

本記事では、外国人雇用を検討しているホテル・宿泊業界の採用担当者の方に向けて、ホテル業界で想定される職種ごとの主な就労ビザの種類を整理し、取得条件や申請時の注意点を解説します。

📌 ホテル・宿泊業で取得可能な就労ビザ一覧

※各在留資格をクリック(またはタップ)すると、そのセクションへ移動します。

在留資格該当する業務例
技術・人文知識・国際業務フロント業務、企画・広報、人事・経理、通訳・翻訳
特定活動(46号)フロント業務、接客、広報・マーケティング

(対象企業のみ)
特定技能客室清掃、接客、レストラン業務
技能(調理技能ビザ)ホテル内レストランでの調理業務
身分系在留資格(日本人の配偶者等・永住者など)制限なくすべての業務に従事可能
資格外活動許可(家族滞在・留学ビザなど)アルバイトとしての就労(週28時間以内)

技術・人文知識・国際業務

外国人をホテル・宿泊業で雇用する場合、最も一般的な就労ビザが「技術・人文知識・国際業務」ビザです。このビザは、バックオフィス業務(人事・経理・広報など)や企画・マーケティング、通訳・翻訳業務など、ホワイトカラーの職務内容に従事する外国人が対象となります。

「技術・人文知識・国際業務」で就労可能な業務

  • フロント業務(外国人対応、予約管理)
  • 企画・マーケティング業務(インバウンド戦略、宿泊プランの企画など)
  • 人事・経理・総務(従業員の管理、経理処理、広報業務)
  • 通訳・翻訳業務(外国人宿泊客への対応、多言語サポート)

このビザでは、単純作業(ルームサービスや清掃業務、荷物運搬など)は認められないため、職務内容には注意が必要です。

📌 技術・人文知識・国際業務の主な取得条件

このビザを取得するためには、申請者の学歴(大学または専門学校での専攻)と、実際に従事する職務内容に関連性があることが求められます。

  • 大学卒業者:学歴と職務内容の関連性は比較的緩やかに判断される
    • 例:経済学部・商学部以外の卒業でも、会計やマーケティングの単位を取得していれば可
  • 専門学校卒業者:職務内容と専攻分野の関連性が厳しく審査される
    • 例:学んだ内容の大半が経理・マーケティングなどバックオフィス業務に関するものである必要がある

「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」の活用

2024年2月29日より開始された「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」に認定された専門学校を卒業した場合、大学卒業と同等レベルとして扱われることになりました。

これにより、このプログラムに認定された専門学校を卒業した留学生は、大学卒業者と同様に比較的柔軟な判断が行われるため、専門学校卒業者でも「技術・人文知識・国際業務」ビザの取得がしやすくなっています。

「技術・人文知識・国際業務」ビザ取得時の注意点

1️⃣ 単純作業を含まない業務内容であることの証明が必要

ホテル・宿泊業には、宿泊客の接遇やルームサービス、荷物運びなどの単純作業が身近にあるため、入管は「単純作業も行うのではないか」と必ず疑います

そのため、申請時には「雇用理由書」などの書類を用意し、以下のことを明確に説明する必要があります。

  • 職務内容がホワイトカラー業務であること
  • 単純作業には従事しないこと

2️⃣ バックオフィス業務を前提とした採用が必要

「技術・人文知識・国際業務」ビザでは、単純作業を行うことが認められないため、採用時点でバックオフィス業務を担当することが前提となります。

そのため、一般的な日本人雇用のように採用後に業務を柔軟に振り分けることが難しく、事前に具体的な業務内容を決めておく必要があります。

特定活動(46号)

特定活動にはさまざまな種類がありますが、近年特に注目されているのが「特定活動(46号)」です。

この在留資格は、日本の大学または大学院を卒業した外国人留学生が、高い日本語能力を活かして幅広い業務に従事することを目的として、2019年5月に新設された比較的新しい在留資格です。

特定活動(46号)の特徴

「技術・人文知識・国際業務」ビザでは単純作業と見なされる業務(例:客室の予約受付、宿泊客の接遇、ホテル内レストランでの接客、ルームサービスなど)は原則として認められません。しかし、特定活動(46号)では、一定条件のもとでこれらの業務を行うことが可能です。

ただし、単純作業が無制限に認められているわけではありません。主な業務は、「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」かつ「大学で学んだ内容に関連する業務」である必要があります。あくまで、これに付随する形で単純作業を行う場合に限り許可される点に注意が必要です。

特定活動(46号)で従事できる業務

  • フロント業務(客室の予約受付、宿泊客の接遇、多言語対応)
  • レストラン業務(ホテル内レストランでの接客、ルームサービス)
  • イベント業務(結婚式・宴会の運営補助)
  • バックオフィス業務(広報・マーケティング、経理、人事)

特に、日本語能力を活かした業務であることが求められるため、外国人宿泊客の対応やインバウンド向けのサービスが主な業務になります。

📌 特定活動(46号)の主な取得条件

特定活動(46号)は非常に便利な在留資格のように見えますが、取得条件は厳しく、すべての外国人が取得できるわけではありません。

  • 日本の大学(短期大学を除く)を卒業、または大学院の課程を修了し学位を取得していること
  • 日本人と同等以上の報酬を受けること
  • 日本語能力試験(JLPT)N1 または BJTビジネス日本語能力テストで480点以上のスコアを取得していること
  • 日本の大学・大学院で学んだ知識や応用能力を活かした業務に正社員・契約社員として従事すること

特定活動(46号)取得時の注意点

1️⃣ 取得できる外国人が限られる

取得条件が非常に厳しいため、この在留資格を取得できる外国人は限られます。特に、JLPT N1レベルの高い日本語能力を求められるため、N2以下の人は申請ができません。

2️⃣ 業務内容に制限がある

単純作業が許可されるといっても、「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」が主な業務であることが前提です。そのため、単純作業のみを担当することは認められません

特定技能

「特定技能」制度は、国内での人材確保が困難な産業分野において、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れるために設けられた在留資格です。

宿泊業も「特定技能」の対象となる16分野の一つであり、フロント業務や接客業務、レストランサービス業務など、ホテル・旅館の幅広い現場業務に従事することが可能です。

特定技能(1号)で従事できる業務

「特定技能(1号)」では、宿泊業に関連する以下の業務に従事できます。

  • 客室清掃(ルームメイキング、備品管理・交換)
  • レストランでの接客(注文受付、配膳・片付け、簡単な調理補助)
  • ホテルのフロント業務(チェックイン・チェックアウト対応、観光案内、ツアー手配)
  • 企画・広報業務(キャンペーン企画、SNS・HPの情報発信、館内チラシ作成)
  • 販売業務(館内売店での商品販売・管理)

「技術・人文知識・国際業務」や「特定活動(46号)」と異なり、単純作業を含む業務にも従事できる点が大きな特徴です。

📌 特定技能(1号)の主な取得条件

特定技能(1号)を取得するためには、主に以下の条件を満たす必要があります。

1️⃣ 技能と日本語能力に関する条件

  • 宿泊業に関する「特定技能評価試験」に合格すること
  • または、技能実習2号を修了していること(試験免除)
  • 日本語能力試験(JLPT)N4以上を取得していること(基本的な日本語能力が必要)

2️⃣ 雇用企業の条件

  • 外国人を適切に受け入れる体制があること(外国人従業員への支援計画の策定が求められる)
  • 適切な労働環境を整備し、日本人と同等以上の報酬を支払うこと

特定技能(1号)のメリットと注意点

メリット:現場業務に従事できる

  • 単純作業を含む幅広い業務に従事可能(「技術・人文知識・国際業務」や「特定活動(46号)」では認められない業務も行える)
  • ホテルや旅館の現場で、直接顧客と接する業務に就ける
  • レストランや調理補助など、宿泊業と関連したサービス業務にも携われる

⚠️ 注意点:ビザ取得の手続きは複雑で、期間制限がある

  • ビザ申請に関わる手続きが多く、取得までに時間とコストがかかる
  • 雇用企業に「外国人受け入れ体制の整備」が求められる
    • これを満たせない場合、受入れ支援機関へ委託する必要がある
    • 委託費用として、採用時に30〜40万円、月額2〜4万円のランニングコストが発生する
  • 5年の在留期限があるため、長期的なキャリア形成を視野に入れた雇用には、特定技能2号の取得が必要となる

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技能(調理技能ビザ)

「技能」ビザは、外国の料理に関する高度な技術を持つ外国人料理人が、日本で調理業務に従事するための在留資格です。ホテル・宿泊業でも、外国人の母国料理のシェフとして採用する場合に取得が可能ですが、申請には厳格な条件が求められます。

技能(調理技能ビザ)で従事できる業務

  • ホテル内レストランでの調理業務
  • 外国の料理を専門とするレストランでの調理

一般的な日本の飲食店での調理スタッフや補助業務は対象外となります。

📌 技能(調理技能ビザ)の主な取得条件

技能ビザを取得するためには、以下の条件を満たす必要があります。

1️⃣ 料理の専門技能と実務経験

  • 外国の料理に関する技能を有し、5年以上の実務経験があること
  • 日本料理などの伝統的な料理の専門技能を持つ場合も対象

ただし、実務経験についての虚偽申告が多いことから、入管は審査を厳しく行っており、許可のハードルは高めです。実務経験を証明するためには、在職証明書や調理師資格などの客観的な証拠を提出する必要があります。

2️⃣ 勤務する店舗の条件

技能ビザが認められるためには、外国人料理人が日本で調理する料理が、その国の伝統的なものであり、日本国内では特殊なものとみなされることが必要です。

  • 勤務するレストランが、外国料理を専門に提供していること
  • 単なる一般的な飲食店ではなく、特殊な外国料理の調理を行う店舗であること

⚠️ 技能ビザ取得時の注意点

許可のハードルが高い

  • 実務経験の証明が厳格に求められるため、在職証明書や資格証明書の提出が必須
  • 過去に虚偽申請が多かったため、審査が厳しくなっており、許可までに時間がかかることがある

従事できる業務が限定される

  • 調理業務以外の業務(ウェイター、レジ、清掃などの単純作業)はできない
  • ホテル内レストランで働く場合も、厨房業務のみであり、接客や運営管理には関われない

日本人の配偶者等や永住許可などの身分系在留資格

「日本人の配偶者等」「永住者」「定住者」など、一定の身分に基づいた在留資格は「身分系在留資格」と呼ばれ、他の就労ビザと異なり、就労の制限が一切ありません。そのため、ホテル・宿泊業においても、最も自由度の高い在留資格といえます。

身分系在留資格で従事できる業務

  • 制限なくすべての業務に従事可能(フロント、接客、清掃、調理、管理職など)

「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」のように、業務範囲に制限がないため、現場業務からバックオフィス業務まで幅広い職種で雇用が可能です。

📌 身分系在留資格の主な取得条件

  • 以下のいずれかの資格を取得していること
    • 日本人の配偶者等(日本人と結婚している外国人)
    • 永住者(日本での長期在留が認められた外国人)
    • 定住者(日系人や特定の事情で日本での定住が許可された外国人)

身分系在留資格のメリット

1️⃣ 業務内容に制限がない

「技術・人文知識・国際業務」では単純作業が認められず、「特定技能」には対象業務が限定されるなど、ほとんどの就労ビザには職務範囲の制限があります。しかし、身分系在留資格では、業務の種類を問わず就労可能なため、採用時の制約がないという大きなメリットがあります。

例えば、以下のような業務に自由に従事できます。

  • フロント業務(宿泊客対応、予約管理)
  • 接客業務(レストランでのサービス、ルームサービス)
  • 調理業務(ホテル内レストランでの調理)
  • 清掃・客室管理(ベッドメイキング、備品管理)
  • 管理職・事務職(人事・経理・広報・マーケティング)

2️⃣ 雇用の際にビザの取得手続きが不要

通常、外国人を雇用する際には、在留資格の取得や更新、就労制限の確認などの手続きが必要ですが、身分系在留資格を持つ外国人は、特定の資格取得や雇用契約に関係なく、自由に就労できます。

そのため、外国人を雇用する場合、「日本人の配偶者等」や「永住者」などの身分系在留資格を持つ方を採用するのが最もスムーズな方法です。

⚠️ 身分系在留資格の注意点

身分系在留資格は、その外国人の身分に基づいているため、その身分を失うと同時に在留資格も失うというリスクがあります。

例えば、以下のケースでは、資格が失効する可能性があります。

  • 「日本人の配偶者等」の場合、離婚すると資格を喪失する可能性がある
  • 「定住者」の場合、特定の事情が変わると在留資格の見直しが行われることがある

このように、企業とは無関係な個人の事情によって在留資格を失う可能性があるため、採用時には慎重に確認する必要があります。

資格外活動許可のある家族滞在・留学ビザなど

家族滞在ビザや留学ビザを持つ外国人は、事前に「資格外活動許可」を取得することで、ホテル・宿泊業でのアルバイトが可能です。この在留資格では、客室の予約受付や宿泊客の接遇、清掃業務などの単純作業にも従事できます。

資格外活動許可で従事できる業務

  • フロント業務(予約受付、チェックイン・チェックアウト対応)
  • 接客業務(宿泊客の案内、ホテル内のサービス業務)
  • 客室清掃(ルームメイキング、備品補充)
  • レストラン業務(配膳、後片付け、オーダー受付)

アルバイトであれば、単純作業を含む業務にも従事可能ですが、就労時間には制限があります。

📌 資格外活動許可の主な取得条件

  • 事前に「資格外活動許可」を取得すること
  • 許可される労働時間は週28時間以内(長期休暇期間は週40時間まで可)

資格外活動許可を取得すると、在留カードの裏面下部に「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」のように記載されます。

資格外活動許可での就労時の注意点

1️⃣ 週28時間を超えた就労は禁止

  • 週28時間を超えて働いた場合、不法就労となるため、厳格な管理が必要
  • 学校の長期休暇期間中は、週40時間までの勤務が可能(留学ビザの場合)

2️⃣ 風俗営業関連の業務は禁止

  • ホテル・宿泊業で働く場合も、風俗営業に関わる業務(ナイトクラブやカラオケ店併設のバー業務など)には従事できない

3️⃣ アルバイト採用時の企業の義務

  • 外国人をアルバイトとして雇用した場合、原則ハローワークへの届出が必要
  • 雇用主は在留カードを確認し、資格外活動許可があるかを確認することが求められる

最後に――宿泊業で外国人を採用する際、お困りのことはありませんか?

ホテル・宿泊業で外国人を雇用するには、業務内容が就労ビザの要件に適合しているか、慎重な確認が必要です。業務内容が不適切だと、申請が通らない可能性もあります。

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