2024年2月29日開始の外国人留学生の方の就労ビザの取得条件緩和の内容について解説します

これまで専門学校卒業者は大学卒業者に比べて基準が厳しく、せっかく優秀な人材を見つけても「ビザが下りるのか」「採用できるのか」と不安を抱くケースが少なくありませんでした。

そこで、2023年6月に「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」という制度が設けられました。

2024年3月から留学生の一部の就労ビザの要件が緩和のページのイメージ画像

この制度は、外国人留学生が卒業後も日本で定着しやすくなるよう支援することを目的としています。具体的には、仕事を通じて経験やスキルを積み、自己実現を図るプロセスに役立つ教育を提供する専門学校を文部科学大臣が認定し、その認定校の卒業生に対して一定の優遇措置を行うものです。

従来の就労ビザ制度では、大学卒業者に比べて専門学校卒業者に対する基準が厳しい部分がありました。しかし、この新制度により「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」に認定された専門学校の卒業生は、一部の就労ビザ取得において大学卒業者と同等に取り扱われることとなり、就労ビザ取得の道が広がっています。
ただし、対象となる学校やビザの種類を誤解すると不許可につながる可能性があるため、正しい情報に基づいた準備が不可欠です。

本記事では、外国人留学生の採用を検討している企業の採用担当者に向けて、制度改正の背景、対象となるビザ、認定校の基準を整理し、採用時に知っておくべき注意点を解説します。

要件緩和の対象となる就労ビザ

今回の改正で要件が緩和されるのは、以下の就労ビザです。

1️⃣ 技術・人文知識・国際業務

2️⃣ 特定活動(告示46号)

「技術・人文知識・国際業務」の見直しについて

「技術・人文知識・国際業務」はいわゆるホワイトカラーの方の在留資格です。この資格では、申請者の学歴・経歴と、就労開始後に行う職務内容との一定の関連性が求められます。

これまで、専門学校卒業者の場合、大学卒業者に比べてより強い関連性が必要とされてきました。例えば、大学の文学部を卒業している方でも、大学で会計に関する単位を一定数取得していれば、経理職務に基づく「技術・人文知識・国際業務」を取得できる可能性があります。実際、当事務所のサポートで関連単位が少なくとも許可が下りた事例もあります。

一方、専門学校卒業者の場合は、国際ビジネスを学んだとしても、経理職務で「技術・人文知識・国際業務」を取得するためには、大学卒業の方より多くの経理関連単位の取得が求められるのが一般的でした。

今回の改正により、「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」に認定された専門学校を卒業した方は、一部の就労ビザ取得において大学卒業者と同等のレベルで取り扱われることになりました。これにより、同認定を受けた専門学校卒業者が「技術・人文知識・国際業務」のビザを申請する際、学歴・経歴と職務内容の関連性の判断基準が大学卒業者と同様に柔軟に運用されるようになります。

「特定活動(告示46号)」の見直しについて

「特定活動(告示46号)」は、留学生としての経験を通じて得た高い日本語能力を活用することを条件に幅広い業務を行うことができる在留資格です。2019年5月に新設された比較的新しい在留資格になります。

この資格では、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では認められない一般的なサービス業務や製造業務を、一定の条件下で行うことが可能です。そのため、業務範囲が広い一方で、取得条件は非常に厳しいものとなっています。

📌【これまでの「特定活動(告示46号)」取得の大まかな条件】

  • 日本の大学を卒業している
  • 日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上の評価受けている
  • 業務内容が「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」と判断できる

ただし、大学等で「日本語」を専攻して卒業した方については、日本語能力試験N1やBJTの基準を満たさなくても条件を満たすと判断されます。なお、大学が海外の場合、日本語専攻だけでなく、日本の大学も卒業している必要があります。

今回の改正により、「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」に認定された専門学校を卒業した方は、一部の就労ビザ申請において大学卒業者と同等に扱われることがあります。これにより、「特定活動(告示46号)」の申請条件である「日本の大学を卒業していること」を満たすものと判断され、当該プログラムの認定校を卒業した方は、大学卒業の要件をクリアした形で申請できるようになります。

ただし、「特定活動(告示46号)」で大学卒業と同等に認定されるためには、2年制専門学校卒業で取得できる「専門士」ではなく、4年制専門学校を修了して取得する「高度専門士」の学位が必要です。この点には十分ご注意ください。

⚠️今回の改正での注意点

「特定活動(告示46号)」の見直しに関しては、もともとの条件が厳しいこともあり、今回の改正で大きな恩恵を受ける方は少ないと考えられます。特に、「高度専門士」の学位を取得している方は限られているため、この改正の対象となる人数はさらに限定的でしょう。

一方で、「技術・人文知識・国際業務」の見直しについては、影響が大きいと言えます。これまで当事務所では、専門学校卒業の方が「技術・人文知識・国際業務」を取得する際、卒業した学校から履修内容に関する書類を取り寄せ、どのような内容を学び、どのような成績を収めたかを詳しく確認してきました。これは、専門学校卒業の方の場合、学歴・経歴と就労開始後に行う職務内容に強い関連性が求められていたためです。

今回の改正により、この関連性の判断が大学卒業者と同様に柔軟に行われることになります。これは実務に携わる立場から見ると、非常に大きなメリットと言えます。

認定校の割合と注意点

ただし、今回の改正にはいくつかの注意点もあります。文部科学省の資料によれば、「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」の令和5年度の認定校は全国に約2,700校ある専門学校のうち187校であり、全体のわずか約7%にとどまります。さらに、その約3割が東京都内に集中しています。

このことから、就労ビザ取得条件の緩和の恩恵を受けられるのは、「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」に認定されているごくわずかの専門学校を卒業した方のみである点に注意が必要です。認定を受けた学校が限られているため、専門学校卒業者全体に広く適用されるわけではない点を理解しておくことが重要です。

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※個別事情に合わせて、許可の可能性と必要な手続きや今後の流れを簡潔にご案内します。

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令和5年度東京都の「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」の認定校

令和5年度に認定を受けた専門学校は、令和6年の入学者から制度の対象となります。

なお、掲載の都合上、下記では学科名を省略しています。「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」は学校単位ではなく、学科ごとに認定が行われています。そのため、以下に掲載された専門学校のすべての学科が認定を受けているわけではありませんのでご注意ください。

令和5年度東京都の「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」認定校一覧
※学科は省略されています。詳しくは各学校に直接お問い合わせください。
東京デザインテクノロジーセンター専門学校専門学校日本動物21東京スポーツ・レクリエーション専門学校
東京コミュニケーションアート専門学校専門学校東京クールジャパン東京デザイン専門学校
東京アニメ・声優&eスポーツ専門学校専門学校東京デザイナー学院東京バイオテクノロジー専門学校
東京スクールオブミュージック&ダンス専門学校専門学校東京工科自動車大学校ホスピタリティツーリズム専門学校
東京スクールオブミュージック専門学校渋谷専門学校東京工科自動車大学校世田谷校東京ホテル・トラベル学院専門学校
新宿医療専門学校新東京歯科技工士学校東京メディカル・スポーツ専門学校
東京観光専門学校新東京歯科衛生士学校東京モード学園
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専門学校トヨタ東京自動車大学校東京アニメーター学院専門学校東放学園映画専門学校
専門学校日本デザイナー学院東京ウェディング&ブライダル専門学校東放学園音響専門学校
東洋美術学校
 参考:文部科学省Webサイト

最後に――留学生の就労ビザ手続きでお困りのことはありませんか?

2024年3月の要件緩和により、留学生の就労ビザ取得は以前より柔軟になりました。しかし実際の審査では、学歴と業務内容の整合性や契約書の記載内容など、細かい点で不許可になるケースもあります。

✅ 採用予定者が要件を満たしているか判断できない
✅ 必要書類や理由書の書き方に不安がある
✅ 申請手続きに時間を割けない

このようなお悩みがある企業さまは、お問い合わせ(初回相談無料)をご利用ください。許可の可能性を簡易的に確認し、必要な手続きや今後の流れをご案内します。

ご依頼いただく場合は、制度改正の最新情報を踏まえ、必要書類の準備から申請代行までを丁寧にサポートいたします。

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