帰国予定の外国人であっても、社会保険への加入は原則として必要です

外国人労働者であっても、日本で就労する以上は日本人と同様に社会保険への加入義務が生じます。たとえ将来的に帰国を予定している場合であっても、労働条件が一定の基準を満たしていれば、原則として社会保険に加入する必要があります

ここでいう「社会保険」とは、一般的に次の5つの保険制度を総称したものです。

  • 健康保険
  • 年金保険
  • 介護保険
  • 雇用保険
  • 労災保険

ただし、実務の現場では「社会保険」という言葉が健康保険・年金保険・介護保険の3つを指して使われることも多く、意味の違いは文脈により判断する必要があります。

社会保険制度は、労働者本人の意思や国籍に関わらず、加入条件を満たした場合には「会社」と「従業員」双方に加入義務が課される制度です。企業側が恣意的に加入を避けたり、外国人だからといって例外とすることはできません。

外国人を雇用する際には、在留資格の種類だけでなく、社会保険の加入状況も重要な確認ポイントとなります。
社会保険の加入は原則として義務であり、在留資格の審査に影響を及ぼす可能性もあります。

⚠️具体的な加入手続きや加入義務の判断については、社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

次に、それぞれの制度の概要について簡単に解説します。

1️⃣ 健康保険

健康保険は、病気やけがをしたときに安心して医療を受けられるよう設けられた制度で、日本に住むすべての人が何らかの形で加入する必要があります。外国人の方も、在留資格により日本で就労する場合は、日本人と同様に健康保険への加入義務が発生します。

✅ 加入の対象者と事業所

  • 法人(株式会社など)
     → 従業員が1人でもいれば健康保険への加入が義務づけられます(「適用事業所」)。
  • 個人事業主(従業員5人以上)
     → サービス業・農林漁業等を除き、原則として健康保険への加入が必要です。
  • それ以外の小規模事業所
     → 「任意適用事業所」となり、希望すれば加入可能です。

✅ 外国人労働者の取り扱い

外国人の方も、基本的には日本人と同じ扱いです。

  • 医療費の自己負担は 3割
  • 配偶者や子が年収130万円未満かつ被保険者の年収の1/2未満であれば、被扶養者として保険に加入可能(扶養者本人が保険料を負担し、扶養者は支払不要)

✅ 加入手続きと注意点

  • 就労により健康保険の対象となる場合、事業主が雇用から5日以内に「被保険者資格取得届」を年金事務所または事務センターに提出する必要があります。
  • 健康保険に加入しない場合(たとえばアルバイトなどで条件を満たさない場合)でも、在留期間が3か月を超え、住民票がある外国人の方は、国民健康保険に加入する必要があります

✅ 国民健康保険への加入

  • 日本に上陸した日から 14日以内に市区町村の窓口で手続きします。
  • 届出が遅れた場合、加入日はさかのぼって適用され、その期間の保険料をまとめて支払う必要があるため注意が必要です。

2️⃣ 年金保険

日本の年金制度は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人に加入義務がある「国民年金(基礎年金)」と、会社などに勤務している人が加入する「厚生年金」の2つから構成されています。

外国人であっても「日本に住んでいる」という点に着目されるため、日本国内で就労・居住している限り、日本人と同様に年金制度の対象となります。将来帰国する予定があるかどうかは、加入義務には関係ありません。

✅ 厚生年金の加入義務

  • 法人(株式会社など)は 厚生年金の適用事業所 となり、従業員の加入が義務です。
  • 個人事業主で 常時5人以上の従業員 を雇っている場合も、農林漁業やサービス業などを除き加入が必要です。
  • 雇用されている外国人も、就労条件が満たされていれば厚生年金に加入します。

✅ 第3号被保険者の扱い(扶養家族)

  • 配偶者が厚生年金に加入している場合、その扶養に入る配偶者や子どもは 「第3号被保険者」 として年金加入扱いとなり、保険料の負担なく将来年金を受け取る権利が得られます。
  • 条件は年収が 130万円未満 かつ配偶者の年収の 2分の1未満 であることです。

✅ 国民年金の加入と注意点

厚生年金の適用がない場合(例えばアルバイトや短時間勤務など)でも、以下の条件を満たす外国人は国民年金に加入する必要があります。

  • 在留期間が3か月を超える
  • 住民票が作成されている

加入手続きは、日本に上陸した日から 14日以内に市区町村役場で届出 を行います。
期限後の届出も可能ですが、その場合は遡って保険料を支払う必要があり、未納が続くと ビザ更新や永住申請に支障が出る場合もあります。

⚠️ 国民年金の未納と永住許可

  • 国民年金を未納・滞納していた場合、永住許可が下りないことがあります。
  • 特に、支払い遅れが1日でもあると不許可となる可能性が高く、非常に厳格に扱われます。
  • 国民年金は納付書が届かないと支払いができないため、加入手続きは必ず期限内に行いましょう。

📌 厚生年金と健康保険の一括手続き

会社での加入時には「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を作成し、年金事務所へ一括で提出します。
このため、以下のような組み合わせで加入することになります。

  • 会社員の場合 → 厚生年金+健康保険
  • フリーランスやアルバイト等 → 国民年金+国民健康保険

💡 帰国する場合の年金はどうなる?

🔹 脱退一時金

外国人が日本を離れる際、「脱退一時金制度」を利用することで、支払った一部の年金を返金してもらうことが可能です。

  • 対象者:日本国籍を持たず、年金の資格を喪失して出国した方
  • 請求期限:日本に住所を有しなくなった日から2年以内
  • 注意点:返金されるのは一部であり、受け取った場合には年金加入期間はリセットされます。

🔹 社会保障協定の活用

日本と協定を結んでいる一部の国では、「社会保障協定」によって以下が可能です。

  • 両国の年金加入期間を 通算して受給資格を満たす
  • 支給される年金額は、実際の加入期間に応じた額のみ

協定国に該当する方は、この制度を活用することで 将来的に年金受給の権利を維持できる可能性 があります。

3️⃣ 介護保険

介護保険制度は、介護が必要になったときに社会全体で支え合うことを目的に設けられた公的保険制度です。外国人であっても、条件を満たせば日本人と同様に加入が義務付けられます

✅ 対象者とサービス内容

介護保険のサービスを利用できるのは、以下の2つの条件のいずれかに該当する方です。

  • 65歳以上で要介護状態にある方(第1号被保険者)
  • 40~64歳で、特定の疾病により要支援・要介護状態となった方(第2号被保険者)

対象となる方は、訪問介護やデイサービス、訪問看護、施設入所などのサービスを、費用の一部自己負担で受けることができます。

✅ 保険料の支払い開始と納め方

介護保険料の納付は40歳の誕生日の月から開始されます。

  • 会社の健康保険に加入している場合
    → 介護保険料は健康保険料に上乗せされて給与から天引きされます。
    → 保険料は都道府県ごとの保険料率で決まり、会社と本人で折半負担します。
    → 配偶者など扶養されている方は支払い不要です。
  • 国民健康保険に加入している場合
    → 保険料は住んでいる自治体が決定し、以下の要素を組み合わせて計算されます。
    • 所得割(前年の所得に応じた割合)
    • 均等割(世帯人数に応じた額)
    • 平等割(一世帯ごとの定額)
    • 資産割(固定資産等に応じた額)
      → 保険料率や算出方法は市区町村ごとに異なります

✅ 65歳以上の納付方法

65歳以上になると、介護保険料は原則として公的年金からの天引き(特別徴収)となり、市区町村が徴収を行います。

✅ 自己負担割合と給付限度額

介護サービスを利用した際の自己負担額は、所得に応じて1割・2割・3割のいずれかになります。

また、介護保険では以下のように「介護度」によって給付の上限額(=月額で使える保険内サービス費用)が設定されています。

  • 要支援1・2
  • 要介護1~5

介護度が重いほど支給限度額も高くなり、より多くのサービスを受けられる仕組みになっています。

4️⃣ 雇用保険と労災保険

「雇用保険」と「労災保険」は、あわせて「労働保険」と呼ばれます。どちらも外国人労働者を含め、労働者を雇用するすべての事業主に対して適用される重要な制度です。

✅ 雇用保険とは?

雇用保険は、失業・休業時の生活安定や再就職支援を目的とした保険制度です。主な給付には「失業給付」「育児休業給付」「介護休業給付」などがあり、働けなくなったときの生活保障に役立ちます。

✅ 労災保険とは?

労災保険は、業務中や通勤途中に発生したけがや病気、死亡事故などに対する補償制度です。治療費や休業補償、遺族給付などが支給されます。

✅ 加入の原則と対象者

労働保険は、事業の規模や業種を問わず、1人でも労働者を雇用していれば原則として適用が義務となります。

  • 正社員・パート・アルバイトなど雇用形態は問わず
  • 外国人労働者も日本人と同様に対象
  • 保険料は原則として事業主が負担(雇用保険は労使折半)

⚠️ 雇用保険の適用除外となるケース

以下に該当する従業員は、雇用保険の対象外となります。
ただし、労災保険は例外なく適用されます。

  • 契約期間が 31日未満
  • 所定労働時間が 週20時間未満
  • 昼間の学生(定時制・通信制・夜間部は除く)

📌 外国人を雇用する際の届け出義務

外国人労働者を雇用した場合、事業主は「外国人雇用状況の届出」をハローワークへ提出する義務があります。

ただし、雇用保険に加入させる場合は、この届出を兼ねることが可能です(別途提出は不要)。

詳細はこちら:➡外国人の方を雇用した会社の届け出義務


🌟 ビザ申請をスムーズに進めたい方へ

ビザ申請では、申請内容や書類の正確さが結果に大きく影響します。審査基準は頻繁に変わるため、常に最新情報をもとに準備することが重要です。ところが、インターネットやAIの情報は必ずしも正確・最新とは限らず、専門的な手続きには注意が必要です。

申請書類の準備方法がわからない
審査官が求めるポイントを押さえたい
不許可リスクを最小限に抑えたい

このようなお悩みがある方は、無料相談をご活用ください!適切な準備を行い、スムーズなビザ取得を目指しましょう。


ビザ申請の代行をご希望の方は、お気軽にご相談ください。

申請に必要な手続きは当事務所が代行します。複雑な準備や対応のご負担を軽減し、落ち着いて申請に臨めるようサポートいたします。

✅📩 初回無料相談はメールで受付中!

無料相談はメールでの受付をお願いしております。正式なご依頼前に料金は発生しませんので、まずはお気軽にご連絡ください。

📱💻 ご希望の方はオンラインの簡単な相談(30分程度)も可能。GoogleアカウントがあればURLをクリックするだけで相談開始。タイミング次第で即日対応も。Zoomや電話での対応も可能です。
➡詳しくは「無料相談・有料相談ガイド」をご覧ください。

🔹ビザ申請の代行・サポートサービス

ビザ申請は 審査官の裁量が大きく、同じ在留資格で同様に申請しても必ず許可が下りるとは限りません。

「書類をそろえるだけ」と思われがちですが、適切な書類の選定や説得力のある申請理由などが結果を左右します。ビザ申請の代行は神山行政書士事務所にお任せください!

ビザ申請のサポート一覧を見る

在留資格・ビザ申請サポートの神山行政書士事務所


🕒【受付時間】10:00~19:00
メール相談は24時間受付中!土日祝も対応、原則1~2営業日以内にご返信します。

📌 まずは無料相談で許可の可能性をチェック!ご相談は下記ボタンから

📌ビザ申請の基礎知識・ビザ申請の手続きに関する記事のピックアップ

ビザ申請の手続き
ビザ申請に関する手続き(3)在留期間更新許可申請

在留期間更新許可申請は、現在のビザのまま日本での滞在を継続するための手続きです。対象者・提出時期・不許可時の対応についてわかりやすく解説します。

詳細を見る
ビザ申請の基礎知識
在留資格取消しの理由とは?|対象となるケースと注意点

在留資格が取消しになるのはどのようなケースかご存じですか?この記事では、入管による取消しの主な理由や対象となる具体的な行為、注意点をわかりやすく解説します。

詳細を見る
ビザ申請の手続き
ビザ申請に関する手続き(4)在留資格取得許可申請

在留資格取得許可申請は、日本で出生した外国人や日本国内で国籍を離脱した方が、日本に引き続き滞在するために必要な手続きです。対象となるケース、申請方法、関係する届出について詳しく解説します。

詳細を見る